標本展示
第63回日本不整脈心電学会学術集会 教育セミナー
「ヒト心臓標本展示」
“循環器疾患の理解に役立つ心臓解剖”
日本医科大学多摩永山病院 内科・循環器内科 井川 修
日本医科大学多摩永山病院 病理部 細根 勝
日本医科大学多摩永山病院 名誉院長 新 博次
常日頃、我々は循環器診療を中で心臓に接し、多くの情報を収集し利用し診療に役立てているものの、その情報は全て間接的なものである。3Dマッピングを始め、機材の進歩により心臓の立体構造を正確に理解できるようになったとはいえ、精密な部分では未だ不十分といわざるを得ない。日常臨床の現場で活きたヒト心臓構造情報を得て、正しく認識することは、いつの時代にも必要なことである。とりわけ、不整脈領域では不可欠であるが、そのチャンスをつかむことは意外に難しい。
このたび、第63回日本不整脈心電学会学術大会 青沼和隆大会長より「ヒト心臓標本展示」の企画のご依頼をいただいた。
本企画は、「教育セミナー」として参加者がヒト心臓の3次元立体構造を十分、理解できるように、実際に触れることのできるヒト心臓標本を準備したものである。病的心臓ばかりでなく正常心臓も展示してあり、それらの比較ができるように配慮している。これまで同学会の「教育セミナー」として、同様な企画を7回担当させていただいているが、昨年、いただいた要望も踏まえ、標本内容を改善しできるだけ分かり易い形での標本展示を心がけた。多くの情報の詰まった貴重なヒト心臓であり、是非、新しい世界を自身で体験し新しいものを掴み、今後の循環器診療の糧としていただきたい。
昨年の参加者の皆様の要望をもとに、本年も昨年とは異なる内容で実標本を用いた2回の教育セミナー(心臓構造学レクチャー)と1回のランチョンセミナーを企画している。
【教育セミナー】
①教育セミナー(心臓構造学レクチャー1)
日時:2016年7月15日(金曜日)10:00~10:50
会場:第5会場(札幌コンベンションセンター 1F 104・105)
講演内容・演者:
「循環器診療の役立つ心臓解剖(1):大動脈基部・房室接合部・両心室乳頭筋・心室中隔・心房中隔および卵円窩など」
井川 修(日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科)
正常心における3次元心臓構造を Neutral position で確認し(I)、アブレーション・デバイス治療に関係する心臓およびその周辺構造について、心外膜側および心内膜側よりNeutral position で確認する(II)。とりわけ、①大動脈基部、②房室接合部、③両心室乳頭筋、④心室中隔、⑤心房中隔・卵円窩などを精密に紹介する(III)。
②教育セミナー(心臓構造学レクチャー2)
日時:2016年7月16日(土曜日)10:00~10:50
会場:第5会場(札幌コンベンションセンター 1F 104・105)
講演内容・演者:
「循環器診療の役立つ心臓解剖(2):構造認識の検査法のピットフォール(3Dマッピング・3DCT・心エコー・MRIなど)」
井川 修(日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科)
侵襲的処置を行う場合、我々はさまざまな検査法を駆使することにより、3次元心臓構造を正確に認識し、なんとか安全かつ確実な方法で処置を行おうとする。しかしながら、それぞれの検査法により得られる心臓構造には、真の心臓構造との間に埋めることのできないギャップ(表現されていない構造)が存在する。このweak pointは、それを使用する側の正確な解剖学的知識により補われなければならない。ここでは、不整脈治療を行うにあたり用いられる3D-mapping、3DCT、心エコー、MRIなどにおいて描出される画像の中にあるピットフォールとそれを補うための基礎的な解剖を述べる。
【ランチョンセミナー】
③ランチョンセミナー6
日時:2016年7月15日(金曜日)12:10~13:10
会場:第4会場(札幌コンベンションセンター 1F 中ホールB)
座長:原田 智雄(聖マリアンナ医科大学 循環器内科)
演題・演者:
「心房細動アブレーションに必要な心臓解剖」
井川 修(日本医科大学多摩永山病院 内科・循環器内科)
【フォアヌーンセミナー】
④ランチョンセミナー2
日時:2016年7月17日(日曜日)10:30~11:30
会場:第9会場(札幌コンベンションセンター 2F 206)
座長:井川 修(日本医科大学多摩永山病院 内科・循環器内科)
演題・演者:
「未定」
坪井 直哉(中京病院 循環器内科)
この「心臓標本展示」へ参加することで、3次元心臓構造の中に新しい発見をされることを期待している。なお、本企画は「厳格な法律的な手続き」を踏んだ上で日本不整脈学会・日本心電学会主催のもとに教育セミナーとして行われており、その主旨にご賛同いただいた多くのご施設・企業の協力で実施されていることを付け加えたい。